「アンダーバリュー(Under Value)」という不正取引について知っておこう!
今回は、「アンダーバリュー」という貿易の不正取引についてご紹介します。
正しい知識を習得することで、貿易での不正取引は防げます。
貿易実務に携わっている方なら、ぜひ覚えておいて欲しい内容です。
「アンダーバリュー(Under Value)」は法律違反!
「アンダーバリュー(Under Value)」とは、輸入時に実際の取引価格よりも申告価格を低くして、関税や消費税などの税金を安く抑えようとする不正取引のことです。
関税や消費税は、申告価格に対して課せられるものです。
そのため、例えば売買契約では商品Aの単価を5ドル、商品Bの単価を7ドルで契約し、実際に輸入者は輸出者に対してその金額を支払うとします。
それにも関わらず、輸出者のインボイスには商品Aは3ドル、商品Bは5ドルと記載して輸入申告すれば、差額である2ドルには関税や消費税がかかりません。
ただ、これは誰が見ても明らかな虚偽申告ですし、脱税になってしまいます。
実際、日本ではこれほどあからさま虚偽申告をする会社はほとんどありません。
しかし、貿易取引は商慣習の異なる国との取引なので、時には輸出者の国ではまかり通ってしまっている「アンダーバリュー」のインボイスが送られてくる可能性もあります。
輸入者がインボイスの記載価格が実際の取引価格よりも低いと気付かずに申告してしまった場合でも、それは虚偽申告になります。
そして税関に見つかれば過少申告として加算税が課されたり、税関に目を付けられたりすることになります。
このため、もし申告後に「アンダーバリュー」に気付いた場合は、すぐに修正申告を行いましょう。
また逆に、自社が輸出者で海外の輸入者から「アンダーバリューのインボイスを発行して欲しい」と言われる可能性もあります。
しかし、「アンダーバリュー」はどの国でも不正取引にあたるので、きっぱりと断ることが大切です。
仮に「アンダーバリュー」のインボイスを発行して、自国や相手国の税関に見つかれば、ブラックリストやグレイリストに入れられることは必至です。
そうなると、今後の貿易取引にまで支障が出てきてしまいます。
こうした事態を避けるためにも、「売買契約の価格とインボイスの価格はきっちりと合わせ、正しい申告をする」「相手にも申告させる」といったことを徹底しましょう。
「アンダーバリュー」に抵触する輸入の具体例
① あからさまな事例:通常品をサンプル品と偽る
サンプル品と偽って安く輸入申告し、あとで正規金額を支払う、というのがもっとも露骨な「アンダーバリュー」の方法です。
これは輸出者と手を結ばなければできないことですが、輸入者が書面上、サンプル品として割安に相当量を輸入申告しつつ、実際は正規料金を輸出者に支払う、という取引です。
サンプル品は「お試し」で使われるものですから、これは、通関時にサンプルだと言えば、実際の価格より安い価格でも輸入許可が下りやすいという慣例を悪用しているということになります。
一度こういうことが明らかになれば、間違いなく摘発を受けることになります。
無償サンプルであっても、インボイス上には単価の金額を設定し「No Commercial Value For Customs Clearance Purpose Only」などと補足で文言を記載する必要があり、輸入時に関税の支払いをしなければなりません。
ただ、単価設定を低くするためにサンプルと故意に記載していれば、「アンダーバリュー」の虚偽申告となります。
② 注意すべき事例:通常品と無償代替品の同時輸入
通常品と無償代替品の同時輸入では、間違った申告をすると「アンダーバリュー」となるので注意が必要です。
例えば、輸入者がある商品300個を輸入する際、そのうち50個は前回の輸入時に欠陥があったことによる無償代替品であった場合などです。
正しくは、インボイス(Invoice/送り状)において無償代替品も通常品と同じ価格にし、50個は「無償」の代替品であることを記載した申告をしなければなりません。
しかし、全てを通常品扱いにして合計金額(250個分×単価)を合計数量(300個)で割って、一つ一つの単価を低く設定した場合、それは一種の「アンダーバリュー」になります。
この場合、インボイスには代替品50個の値引き額を▲やマイナスで記載し、合計金額を250個分にしておけば、実際の支払い金額とも一致し、輸入申告のインボイスとしても成立します。
巷では、こうした値引きを行う際に作成されるインボイスが、「アンダーバリュー」に抵触していることがあるので、ご注意ください。
上記は気づかれにくいタイプの「アンダーバリュー」ですが、税関が事後調査でインボイスを遡って調べた時に、同じ商品の輸入価格が明らかに違えば、単価調整した「アンダーバリュー」だと注意を受ける可能性があります。
アンダーバリューを行った者に対する懲罰について
「アンダーバリュー」は刑事罰の対象となる不法行為です。
「アンダーバリュー」が発見された時には、過少申告加算税と延滞税の支払いが発生します。
また、その行為が悪質だと判断されれば、重加算税も発生するかもしれません。
更に、「アンダーバリュー」を行っていた会社としてブラックリスト入りし、今後の通関の際に厳しいチェックが入ることになるのは間違いないでしょう。
「アンダーバリュー」は世界共通の不法行為ということもあり、各国の税関は様々な情報を収集し、対策を講じています。
このため、輸出入者はきちんと正しい申告を心がけるのはもちろんのこと、もし誤りに気付いた時には、すぐに修正申告を行いましょう。
そして、不明なことがあれば、通関のプロフェッショナルであるフォワーダー(Forwarder)や税関に問い合わせるなど、しっかり確認することが大切です。
「アンダーバリュー」がどういうものか、ご理解頂けましたでしょうか。
今回は「アンダーバリュー」の基礎知識と、具体的な事例をご紹介しました。
もし知識がなければ、知らずに不正取引をしていることもあるかもしれません。
正しい申告の仕方について、しっかりと頭に入れておきましょう。