航空輸送と海上輸送、それぞれの特徴と比較方法を徹底解説!
海外への輸送には、航空輸送と海上輸送の2通りの方法があります。
それぞれにメリットとデメリットがあるため、どちらの方法で輸送するかを検討する際は、貨物の量や内容、料金や輸送に係る日数を考慮することが必要です。
今回は、そんな2つの輸送方法の特徴について整理していきましょう。
短時間で輸送が完了する航空輸送
航空輸送の最大のメリットは、短時間で輸送を完了できることです。
日本発の輸送であれば、アジアやオセアニアへは10時間以内に貨物を届けることができます。 北米や欧州の国々でも、直行便さえあればその日のうちに輸送が完了しますし、直行便がない場合でも3日程度あれば貨物は到着します。
航空輸送で運ばれる物
その輸送速度の速さを活かして、次のような商品が航空輸送で運ばれています。
①鮮度が求められるもの(生鮮食料品や切り花など)
②貿易に関する重要書類(BILや原産地証明書など)
③早期納品が必要な消費者向け商品(パソコンやスマホなど)
④早期納品が必要な医療用品(医療器具や薬など)
⑤早期納品が必要な製造部品(自動車や電子機械の部品など)
⑥季節消費商品(クリスマスやバレンタイン向け商品など)
⑦イベント用商品(コンサート用の機器や衣装など)
⑧短期間で輸送する必要がある生き物(熱帯魚や小動物など)
航空輸送のメリット
①輸送時間の短さ
先に説明した通り、短期間で貨物を届けられることは航空輸送の一番のメリットです。
続いて説明する優先扱いサービスを適用しなくても、3日程度あれば貨物を届けることができます。
②優先扱いサービスを適用できる
優先扱いサービスを適用すれば、積載貨物が航空機の積載量を超過した場合でも優先的に輸送してもらうことができます。
指定の納品期日が迫っている場合などは、このサービスを利用すれば確実に送品を届けることができるでしょう。
③余裕を持って貨物を搬入できる
航空輸送の場合、貨物搬入の締め切りが出発の3時間前程度であることが一般的です。
急遽輸送が必要になった場合でも対応できるので、前々日までに搬入が必要となる海上貨物と比較して非常に利便性が高いと言えます。
④輸送中の貨物温度が安定している
航空輸送中の貨物温度は、4℃から27℃の間で保たれています。
一方、海上輸送の場合、熱帯地域通過時には50℃を上回ることもありますし、寒冷地域通過時には0℃を下回ることもあります。
温度変化により悪影響が発生する商品の輸送には、航空輸送の方が適していると言えるでしょう。
⑤代金回収までの時間が短い
代金支払い方法を後払いに設定している場合、商品輸送が早く完了すればその分だけ代金も早く回収することができます。
資金効率という面でも、航空輸送は優れています。
⑥海岸地域以外へも効率的に輸送できる
航空輸送は海上輸送と違い、海岸地域以外へも効率的に輸送を行うことが可能です。
海岸から離れた地域であっても、近くの空港から陸路で輸送を行えば輸送期間短縮と費用節減を実現できます。
航空輸送のデメリット
①海上輸送より高コスト
航空機の積載量には限りがある上、相当の燃料が必要となるため、海上輸送と比べてコストが高くなります。
海上輸送であれば一隻で数万tの貨物を輸送できますが、航空輸送の場合は130t程度が限界です。
②保冷コンテナの費用が高い
航空輸送では、必要に応じて保冷コンテナをレンタルすることが可能です。
最小のものは3.5㎥サイズですが、それでも30万円程度のレンタル料が必要な上、航空運賃も加算されることになります。
このように保冷コンテナは非常に費用が掛かってしまうため、利用されるのはほとんど医薬品を輸送する場合のみです。
医薬品輸送には緻密な温度管理が要求されるため、たとえ高額であったとしても保冷コンテナを使わざるを得ないのです。 また、医薬品には非常に利益率が高いという特徴があるため、高額な費用を支払っても利益を確保できるということも、保冷コンテナが利用されている理由のひとつと言えるかもしれません。
低コストで貨物を輸送する海上輸送
続いて、海上輸送の特徴について説明していきます。
海上輸送の最大の特徴は、貨物の大量輸送により低価格で輸送を行えるという点です。
海上輸送のメリット
①低コストで輸送を行える
低コストで輸送を行えることは、海上輸送の大きなメリットです。
例えば、日本から中国への輸送の場合次のような価格になります。
・LCL(コンテナ未満貨物)・・・最大2万円/1㎥程度
・FCL(コンテナ単位貨物)・・・最大10万円/1コンテナ程度
なお、20フィートのコンテナであれば最大20パレット程度、40フィートのものであれば最大30パレット程度の貨物を積み込むことができます。
コンテナの積載量いっぱいまで貨物を積み込めば、1製品あたりの輸送コストを押し下げることが可能です。
海上輸送のデメリット
①輸送に時間がかかる
海上輸送を行うの場合、ある程度の時間が掛かることは理解しておかなければいけません。
日本から中国への輸送であれば、実際の輸送期間は5日程度ですが、通関や荷役にも日数を要するため2週間程度の期間が必要になります。
納期に十分な余裕がある場合であれば特段問題はありませんが、迅速に輸送を完了させる必要がある場合は適切な輸送手段とは言えません。
②内陸部への輸送に適していない
輸送先が内陸部の場合、一旦港で貨物を陸揚げした後、陸路で輸送を行うことが必要になります。 結果として輸送機関が長くなり、コストも高くなってしまうため、この場合も適した輸送手段とは言えないでしょう。
航空輸送と海上輸送の検討方法
航空輸送と海上輸送、どちらの方法で輸送を行うか検討する際にまず考えなければいけないのが、輸送期間です。
いつまでに輸送を完了させたいのかを明確にし、それに適した方法を検討していくことが必要です。
必要となる輸送期間の考え方
それぞれの輸送方法による、日本から主要輸出先への一般的な輸送期間は次のとおりです。
海上輸送期間 航空輸送期間
香港 5日 1日
ドイツ 30日 1~2日
アメリカ 20~40日 1~2日
ベトナム 10~14日 1日
韓国 3日 1日
上記はあくまで、実際の貨物輸送期間であることに注意が必要です。
貨物の輸出には、実際の輸送期間以外にも税関手続きや荷役、集荷、配送といった作業に日数を要することになります。
例えば、日本から韓国へは航空機を使えば2時間程度で到着しますが、出荷した当日に韓国国内へ貨物を届けることは不可能です。
通常の場合は、国内の拠点から商品を出荷した日を「1日目」と数えると韓国の納品先へ商品が届くのは「5日目」になります。
上記の場合の輸出スケジュールは次の通りです。
1日目:出荷
2日目:輸出空港到着、輸出通関
3日目:輸出空港出発、輸入空港到着
4日目:輸入通関、輸入空港発送
5日目:納品
スケジュールを見てもらえば分かるように、月曜日に出荷した商品が納品されるのは金曜日になります。
もちろん、フライト時間や休日を挟むかなどの条件により日数は変動しますし、チャータートラックや夜間緊急通関などを利用して、輸送日数を短縮することも可能です。
海上輸送であっても実際の輸送期間以外の日数は必要になります。輸出国及び輸入国のそれぞれで3日程度必要になると考えておくと間違いないでしょう。
輸送費用の比較方法
輸送方法を検討するときに輸送期間と併せて重要になるのが、輸送に関わる費用です。
ここでは、100kgの貨物を日本から香港へ輸送する場合の輸送費についてシュミレーションしていきます。
貨物内容は次の通りです。
・荷姿:カートン
・寸法:30cmx30cmx30cm
・数量:10箱
・総重量:100kg(10kg×10箱)
・容積:0.27㎥
航空輸送費用
航空輸送の場合、輸送費用は30,000円程度となります。
航空輸送では、実重量と容積重量の大きい方が運賃適用重量として採用されます。
容積重量は、6000㎠あたり1kgと規定されているので、上記の場合は次の計算式により45kgとなります。
計算式:(30cm×30cm×30cm)÷6000㎤×10箱=45kg
実重量は100kgのため、運賃適用重量として採用されるのは実重量です。
香港までの航空運賃単価は300円/kg程度のため、300円×100kgで30,000円程度の運賃となります。
海上輸送費用
海上輸送の場合、輸送費用は20,000円程度になります。
海上輸送の容積重量は1㎥あたり1tとして計算され、1㎥未満の場合も1㎥として計算されます。
上記の場合も容積は0.23㎥ですが、1㎥(1t)分の費用が必要です。
香港までの海上運賃単価は20,000円/1t程度のため、20,000円程度がこの場合の運賃額になります。
ここまでの計算は、あくまで目安額を算出するためのものであり、月間の輸送量などによって輸送運賃は大きく変動します。
また、航空輸送と海上輸送の価格差について、想像よりも小さいと感じられたかたもいるかもしれませんが、貨物の重量によってはその価格差も変動します。
そのことを確認するために、貨物の容積はそのままで重量が1tになった場合についても確認しておきましょう。
貨物重量が1tの場合の運賃比較
結論から言うと、重量が1tになると航空輸送運賃が大きく跳ね上がります。
一方、海上輸送運賃については、変動がありません。
それは、海上輸送では1㎥未満の貨物であっても1㎥(1t)分の費用が要求されていたからです。
重量が1tになった場合のそれぞれの輸送費用は次のとおりです。
・航空輸送:1,000kg×300円=300,000円
・海上輸送:1t×20,000円=20,000円
かなり価格差が大きくなることが確認いただけると思います。
この程度の価格差があれば、必要日数等を考慮しても海上輸送が選択される場合もあるはずです。
輸送する貨物の容積や重量により価格差が大きく変動することは、しっかりと理解しておきましょう。
今回のまとめ
今回は、航空輸送と海上輸送の2つの輸送方法について説明させていただきました。
航空輸送の一番の特徴は、輸送期間の短さにあります。
一方、海上輸送は低コストでの輸送が特徴と言えます。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、適した輸送方法を選択していきましょう。