APEC(アジア太平洋経済協力)は何をしているの?
テレビやネットのニュース、または新聞などでも「APEC」の名前は耳にすることがよくあると思います。
しかし、実際にはどのようなことをしている組織なのかご存知でしょうか?
今回は、APEC(アジア太平洋経済協力)がなぜ設立されたのか、そしてAPECの特徴についてご紹介します。
なぜアジア太平洋地域の国々が協力しようと設立されたのか?
現在、APEC(Asia-Pacific Economic Cooperation)にはアジア太平洋地域の21の国と地域が参加しています。
具体的には、アメリカ・インドネシア・オーストラリア・カナダ・韓国・シンガポール・タイ・中国・香港・台湾・チリ・ニュージーランド・マレーシア・メキシコ・パプアニューギニア・フィリピン・ブルネイ・ベトナム・ペルー・ロシア、そして日本が参加しています。
こうして参加国を見ると、アジア地域だけにとどまっていないことに気づかれる方も多いと思います。
しかし、そもそもAPECがどのように設立されたのかご紹介しましょう。
APECが設立された経緯
1980年代の後半、ヨーロッパでは後にEUとなる市場統合が進んでいました。
市場統合とは、財・人・サービス・資本の移動が確保された国境のない地域づくりを目指した試みでした。
また北米でも、アメリカ・カナダ・メキシコが現在のNAFTA(North America Free Trade Agreement/北米自由貿易協定)となる交渉を開始するなど、地域連携の交渉が活性化していました。
そうした状況の中で、アジア太平洋地域にも経済の連携・協力の必要があるのではないかと思い始めた人々がいました。
日本政府もその一つで、各国に経済の連携を働きかけていったのです。
こうした機運が高まり、1989年に当時のオーストラリア首相であるホーク首相が「アジア太平洋地域の持続的な経済発展および地域協力のための会合」の創設を提唱し、第一回目が始まりました。
同年、オーストラリアのキャンベラで開催された閣僚会議では、12の国でスタートしました。
それからアジア地域との経済的な繋がりが深い国や地域が関心を持ち始め、参加国や地域が増えていきました。
APECは「Economic Cooperation(経済協力)」と組織名に入っているように、主に地域の成長と発展、より開かれた貿易体制への推進と強化、国をまたいだ貿易や投資における障壁の削減が重視されています。
つまり、「より自由で開かれた貿易や投資のため、どのように経済協力ができるか」を話し合う場となっています。
ビジネス界との連携が強いAPEC
ABAC:ビジネス界の声を直接聞くメカニズムについて
APECにはABAC(APEC Business Advisory Council)という諮問機関があり、ビジネス界を代表する民間人で構成されています。
APEC参加国・地域の首脳より指名されたメンバーは、代表として各国首脳や閣僚に対して提言を行っています。
これは国際機関では画期的な仕組みです。
民間からはビジネスの現場に基づいた具体的な要望を伝えることができ、各国首脳もニーズを踏まえた形で議論し、実際の活動・取組に活かすことができるという意味で、APECの特徴の一つになっています。
法的に拘束しない、緩やかな政府間協力
また、APECは法的に拘束しない、緩やかな政府間の協力であることも特徴です。
例えば、経済連携を推進する各国の自発的な行動、取り組みを認め合っています。
APECが目指している「より自由で開かれた貿易・投資」の取り組みで何か成果があれば、参加国が情報共有し、更に発展させていく。
まさに「開かれた」地域協力を行っている機関だといえます。
時代によって各国が抱える課題は異なるでしょうが、各国の経済において貿易が重要な位置を占めるようになった現代では、関わり合う国々が一堂に会する機会は貴重です。
近年、アジア圏の国々の発展は目を見張るものがありますが、APECの会合も各国の発展に一役買っているのです。
ちなみに、APEC参加国全体の人口は世界人口の約4割を占めていますが、経済規模も世界全体から見ても大きな割合を占めており、貿易量の約5割、GDPは約6割も占めています。
「APEC」がどんな組織なのか、理解が深められたでしょうか?
今後もアジア太平洋地域の成長、発展にむけて様々な活動を話し合っていくことが期待されています。
ぜひAPECに注目してみてください。