「Credit Note(クレジットノート)」と「Debit Note(デビットノート)」について
今回は「クレジットノート」と「デビットノート」という書類についてご紹介します。
貿易実務の参考書には、あまり紹介されていない書類ですが、実務では時折必要となる書類です。
まだ知らなかった方、知識があやふやな方は、この機会にぜひ覚えておきましょう。
支払いを約束する「クレジットノート」と支払いを求める「デビットノート」
まずは「クレジットノート(Credit Note)」と「デビットノート(Debit Note)」がどのような場面で発行されるのか、その背景から説明しておきましょう。
既に貿易事務の仕事をされている方はご存知だと思いますが、貿易取引では、輸出者(売主)が輸入者(買主)へ送った「商品の到着」と、輸入者から輸出者への「商品代金の支払い」には時差があります。
例えばスーパーなど小売店では、商品の支払いと受け取りが同時に行われますが、貿易取引ではそのタイミングがズレてしまいます。
輸入者が商品を受け取る前に支払うケースが多いのか、商品を受け取ってから支払うケースが多いのかは、輸出入者の関係性によっても異なります。
しかし、一般的には前者のケースの方が多いのが実態のようです。
どちらの場合でも、届いた商品に欠陥品がなく、数量も正しく入っていれば何も問題は起こりません。
しかし注文した商品が入っていなかったり、数量が足りていなかったり、あるいは輸送中の荷崩れなどでの商品として使いものにならないような不良品があったりする場合もあります。
万が一こうした問題が起きた際には、その分の商品代金の支払いについて揉めることになります。
基本的に商品を受け取ってから支払う場合は、商品確認後に代金を支払う輸入者が優位に立って交渉を進められます。
一方で商品を受け取る前に支払う場合は、輸入者はすでに支払ってしまっているため、輸出者のミスであっても、返金の交渉を強いられます。
実務では、こうした問題が発生したら輸入者からすぐに輸出者に欠品や不良品があったことをメールや文書にして伝え、証拠書類や写真などと一緒に送ります。
そして、その輸入者のクレームを輸出者が受け入れ、非を認めたときに出番となるのが「クレジットノート(Credit Note)」と「デビットノート(Debit Note)」です。
2つの書類に関する注意点
ちなみに、「クレジットノート」は輸出者が輸入者に対して返金を約束する、つまり債務を認める書類です。
また「デビットノート」は輸入者が輸出者に対して返金を請求する、つまり債権を請求するときに発行する書類です。
この2つの書類は対になる書類ですが、実務では両者がそれぞれ発行するということはなく、どちらか一方が発行すればもう一方は発行することはありません。
一般的に上記のようなケースの場合は、輸出者が返金を約束する「クレジットノート」の発行だけで済ますというケースが多いです。
ただご注意して頂きたいのは、「クレジットノート」や「デビットノート」という書類は伝票的な性質、書類が発行されたからといって、ただちにその金額が支払われることは少ないということです。
どちらかといえば、継続的な取引をしている中で、次に支払いがあるときに相殺(ネッティング)するために利用されることが多いものです。
この相殺して決済する(ネッティング)という方法は貿易特有の商慣習ですが、これは返金する金額が小さければ、海外送金の手数料の方が高くつくということも理由の1つでしょう。
ただ、相殺することがルールとして決まっているわけではありません。
返金金額だけで送金しても問題はなく、相手との交渉次第です。
ちなみに、国によっては、相殺(ネッティング)が認められない国もあります。
「クレジットノート」や「デビットノート」を発行するような事態が起きたら、交渉時に確認するようにしましょう。
また補足になりますが、「クレジットノート」「デビットノート」の書類様式は決まったものはなく、会社によって異なります。
どんな書式なのか興味のある方は、「Credit Note」、「Debit Note」で画像検索をしてみてください。
参考になるような様々なフォームを見ることができるでしょう。
今回は「クレジットノート」と「デビットノート」という書類について詳しくご紹介しました。
2つの書類について、理解を深めることができたでしょうか。
実務の場面では様々なパターンがありますので、よく確認しながら交渉や書類作成を進めるように注意しましょう。