「人生はいつでも変えられる」「続けていれば夢は必ず叶う」ひとり貿易を通じて伝えていきたい
個人が貿易を行うには困難が多すぎた10年前。
「やり方がないなら自分で作ろう」そう信念を持ってユビケンを設立し、「ひとり貿易」を生み出した大竹秀明氏。
ギタリストだった彼がなぜ貿易の世界に足を踏み入れ、どのような想いでひとり貿易を伝え続けているのか。ひとり貿易に込められた熱い想いを語っていただきました。
34歳で音楽と決別。第二の人生「貿易」の世界へ
24歳の頃にバンドデビューを果たし、バンド一筋でやってきました。しかし30歳を節目に「このままで良いのかな・・・」と人生を考えるように。32歳を過ぎた頃には「このまま続けていても全盛期の自分には敵わない・・・」そう悟ってしまったんです。
このまま音楽を続けるよりは新しい人生をはじめた方が良いと思い、何ができるのかを考えた時に「楽器の転売ならできるかも」そう思いました。
なぜならバンドの機材をアメリカのサイトeBayで買って、使わなくなったらヤフオクで売るという経験があったんです。普通に楽器屋さんで下取りしてもらうと「傷がついてるね〜」とか「説明書がないね〜」とか、数百円にしかならないのに、ヤフオクでは購入した金額よりも高く売れたことがあって。あの時は衝撃的でした。
34歳の誕生日に当時あった渋谷のライブハウスでバンドを解散し、翌日からビジネス1本でやっていくことを決意しました。
輸入転売からスタートするも、薄利多売で倒産の危機に
楽器やフィギア、フィットネスグッズなどの輸入転売からスタート。世界的に有名な掃除機なども販売し、1億、2億、3億・・・と売り上げを作っていったんです。だけど壁にぶち当たりました。売り上げは良くてもSALEやポイント還元をウリに販売していたら、利益が全く残らなかったんです。
ある日税理士さんに真顔で「このままだと会社が潰れますよ。考えてください」と言われました。
その言葉をキッカケに気がつきました。自分にしか販売できないものを扱って、利益率をしっかり取って売らないとビジネスは続かないことに。そこからは輸入転売ではなく、ライセンスを取って販売する総代理ビジネスの勉強をはじめました。
「個人でもリスクなくできる貿易ビジネスを作ろう」ひとり貿易の誕生
ジェトロさんやミプロさんなど、貿易の情報を提供してくれる団体で、ざっくりとした貿易の流れを学びました。
そして、とりあえずやってみようと思い、初めて訪れたのが香港の展示会。そこには世界中の新商品がびっしり並んでいて、海外ならではのスケール感、海外に出てきた開放感で気持ちも高まりました。思っていたよりも海外メーカーさんは話を聞いてくれて「日本で販売しても良いよ」って言ってくれたんです。
しかし、ここで仕入れの壁にぶち当たりました。海外メーカーからは「1000個買ってくれ」と言われるんです。当時は交渉の仕方もわからず、「売れるかわからない商品を1000個買うのは厳しいな・・・」そう感じました。
さらに東京ギフトショーの事務局に問い合わせたら、出展するのに100万円位必要だと言われて・・・。
仕入れにも、商品の販売先を探すのにも、お金がかかる。今のやり方では個人が貿易に挑戦するのは厳しいことを実感しました。でも何かやり方があると思ったんです。
当時もSNSが普及して個人の時代だと言われていました。「だったら貿易だって個人でできるだろう!やり方がないなら自分で作ろう!」そう信念を持って、仲間と一緒にユビケンを設立しました。
そして、そこで生まれたのが「ひとり貿易」
本当の意味で、個人でもリスクなくできる貿易ビジネスを作ろうと、名前を付けてからやり方を模索していきました。
稲妻が走ったクラウドファンディングとの出会い
経営学を学ぶために入っていた大前研一さん主催のビジネス・ブレークスルー大学で「アメリカでは最近、クラファンで資金を集めて会社を作っている企業が増えている」そんな話を耳にしました。当時はすでに起業している自分には関係ないことだと思っていたんです。
貿易とクラウドファンディングが重なり合ったのは、東京ギフトショー。僕のブースにひとりの女性が来て「面白い商品がいっぱいありますね」と声をかけてくれたんです。その女性の名刺にはMakuakeの前身であるサイバーエージェント・クラウドファンディングと書いてあって、「御社もクラファンをやるんですね」って話しかけたら「クラファンは輸入品にも合うんですよ」って何気なく言ったんです。
その時はビビビビビっと稲妻が走りましたね。まだ日本で発売されていない海外の商品は全て新商品。それをクラウドファンディングで先に販売すれば、売れたお金で仕入れができる。「これは絶対に来る!」と、ものすごく興奮したことを今でも覚えています。
初めてのクラウドファンディングは時期尚早で大失敗
僕自身の最初のMakuakeプロジェクトは、3Dフィギア。
当時は3Dフィギアを作るのにスキャンの時間が30秒ほどかかったんです。それだと子どもやペットは動いてしまうから難しいですよね。だけど僕が展示会で見つけた3Dフィギアはスキャン時間がたったの3秒 。これなら3Dフィギアで家族の想い出を残していけると思ったんです。
しかし結果は大失敗。大こけしました。なぜならまだ誰もクラウドファンディングを知らない時代だったし、早過ぎたんです。Makuakeの前身サイバーエージェントさんのオフィスに打ち合わせに行っても、当時はまだクラウドファンディングの攻略法がわからなくて「どうやっていこうか」とやり方を模索している状態だったんです。
その後もMakuakeで小さなスピーカーや、韓国メーカーのずっと使える洗濯ボールを販売したけれど、全く売れない。そのまま1〜2年が経過しました。しかし水筒が1,000万円も売れちゃったり、アウトドアグッズが売れたり、少しずつ売れる事例が出てきたんです。そこからは一気に飛躍しました。
その後は台湾製の自転車スマホホルダーやドイツのドローンなどで成功し、今でも代理店として販売している商品もありますよ。
「世の中を豊かにしたい」その想いで教えることに挑戦
今でこそ人に貿易を教えたり、先生って言ってもらえたりしているけれど、バンド時代はMCをやるタイプではなくて、割と無口なキャラだったんです。バンドを辞めて起業した時も、人前には出ずに自分や家族、周りの人を幸せにして生きていければ良いと思っていました。
そんな僕が貿易を教えるキッカケになったのは、輸入ビジネスの実績を評価してもらい、セミナー登壇の依頼を受けたこと。「マネされたら嫌だな」そんな気持ちを抱きつつも1回だけやってみようと思い、これまで自分が経験してきたことを全てさらけ出してセミナーを行ったんです。
そうしたらセミナーが終わった後に「大竹さんが言っていたことを実行したら、売り上げが上がりました!」「おかげで独立できました!」そんな声をいただいて。純粋に嬉しかったし、これってすごく価値があることだと感じたんです。
ただ貿易会社の経営と教えることの両立が難しく、そのタイミングでユビケンの共同設立者も辞めてしまって。人に教えることを辞めようと思った時期もありました。だけど税理士さんが「貿易会社は頑張ればできるのかもしれない。だけど人に教えたり、伝えることは誰にでもできることではありません。僕はそっちの方が大竹さんの気質に合っていると思いますよ」そう褒めてくれたんです。
税理士さんの言葉を聞いた時に「たしかにな」と思えたし、自分や家族、周りの人が幸せになることで完結させるのではなく、ひとり貿易を伝えた方やその方の周りの人までも幸せにできれば最高だと思いました。
コロナ禍で生まれたオンライン完結型「ひとり貿易塾」
コロナが流行る前は、海外の展示会に直接足を運び、その場で海外メーカーと交渉するやり方でひとり貿易を教えていました。
コロナが流行り出したのが2019年の1月頃、3月にはオンライン完結型の貿易塾を作ることを決意して、4月にはひとり貿易塾の募集をスタートしました。
音楽と決別した時もそうですが、僕はこのままではダメだと悟った瞬間に切り替えができる人間みたいです。
音楽や芸事の世界は能力や才能があっても売れるとは限らない。どれだけ努力してもたどり着けないところがある世界です。一方でビジネスはやっていれば必ず結果が出る世界。基本的にやればできると思っているので、ひとり貿易塾を作った時も迷いや不安はなかったです。
日本一わかりやすく貿易を伝えたい
ひとり貿易塾はオンライン完結型。基本的には生徒さんに会いません。だからこそ生徒さんとの距離感が出ないように、毎日生徒さんに向けてコラムを書いたり、セミナーにもなるべくライブで参加してもらったり、生徒さんが孤独感を感じないように気をつけています。
個人でもできるひとり貿易を打ち立てた以上、わかりやすくないと誰もが実施できないですよね。だから専門用語は使わずに、なるべくわかりやすく伝えることは、すごく意識しています。「日本一わかりやすく貿易を語りたい」そう思っているんです。
これまで10年間ひとり貿易を伝えてきたけれど、最初の頃は「これだけ僕が教えているのに、どうしてやらないの?」素朴にそう思った時期もありました。だけど気がついたんです。生徒さんはいろいろな環境やキャリアを積んできている方。能力や得手不得手はそれぞれ違うよなと。「あなたがやらないからできないんだ」その考えは僕の責任逃れだと感じるようになりました。それからは「とにかく結果を出してもらおう。結果が出れば楽しくなるはず」そのマインドでいます。
だからどうしても商品が見つからない人には商品を提供したり、なんだかの救済措置はしてあげたいと思っています。
老子の格言で「魚を与えるのではなく”釣り方”を教えよ」という言葉があります。「人に魚を与えれば一日で食べてしまうけれど、釣り方を教えれば一生食べていける」という考え方です。
本来は魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えるべきなのかもしれない。だけど、魚を釣る時の糸の緩みや釣った時の感触は経験しないとわからない。だからまずは経験をするために、こちらから魚をあげても良いと思っているんです。
人生はいつでも変えられる、ひとり貿易を通じて伝えていきたい
ひとり貿易はビジネスという太いパイプで海外と繋がることで、世の中にはもっと色々な世界があることを実感し、自分の殻を破って成長できる働き方、そして生き方そのものです。
さらにそれだけではなく、「人生はいつでも変えられる」「続けていれば夢は必ず叶う」、ひとり貿易にはそんなメッセージも込められているんです。
僕はひとり貿易の世界観を愛しています。だからこそ、ひとり貿易を伝えていきたいと思っています。
これまでは「ひとり貿易=大竹」のイメージが強かったけれど、これからはユビケンの若いスタッフにも活躍してもらって、若い人にとって貿易ビジネスや副業、起業がもっと身近になる活動をしていきたいです。わかりやすくいうと、子どもの将来なりたい職業の第5位くらいに貿易家がランクインしてくれたら良いな、そんな風に思っています。
自分の夢・理想・目標にちゃんと向き合うことの大切さ
「お金持ちになりたい」
「自由になりたい」
「海外にいきたい」
ぼんやりと思い描いている人がいるけれど、それでは夢は叶いません。
自分の夢・理想・目標、そこにちゃんと向き合う。自分がなりたい姿をもっとありありと描いて、そこにたどり着くためにどうしたら良いのかを必死に考えて、なすべきことを淡々とやっていくのが人生なんじゃないかな。
人生は諦めた瞬間に終わってしまうから、だから諦めて欲しくないんです。みんなもっと自分の与えられた能力を開花するべきだと思うし、それを使い切って死んでいくべきだと思う。
もっと具体的に夢や理想を掲げて、強い想いを持って諦めずに行動すれば、大抵は叶います。ひとり貿易に限らず、ビジネスは諦めずにやっていれば絶対に勝つ。これは声を大にして言いたいですね。
大竹 秀明
1974年に東京で生まれ、 神奈川県横浜市で育つ。
元ビジュアル系メジャーギタリスト (EMIミュージックジャパン)から34歳の時に貿易家に転身。
クラファン×貿易の可能性に着目し、「ひとり貿易」を生み出す。
これまでのプロデュース実績は累計800件・18億円以上。ひとり貿易コンサルタントとして10年間で1万人以上に講演指導を行い 日本郵便やYahoo!、東京インターナショナルギフトショー、東京都中小企業振興公社などでも講演。
史上唯一の3大クラウドファンディング公式パートナーを務める。
「セカイをワクワクさせる貿易家を生み出す」 を理念として精力的に活動中。休日はお子さんと一緒にゲームを楽しむ2児の父でもある。
- 一般社団法人 まじめに輸入ビジネスを研究する会 代表理事
- 株式会社カルペディエム 代表取締役
- TIGS クラウドファンディング・ラウンジ 主催
- Makuakeエバンジェリスト(ベストパートナー2019受賞)
- CAMPFIREキュレーションパートナー
- GREENFUNDINGパートナー