クラファンで終わらせない。夫婦で2ブランドを育てた『ひとり貿易』のいま

「日本にも、こんな商品があったらいいのに」

タイ駐在中に芽生えた思いをきっかけに、帰国後、夫婦で「ひとり貿易」の世界へ飛び込んだ山下さんご夫婦。

入塾後は、何百社ものメーカーにアプローチ。なかなか商品が見つからず焦る日々のなかで出会ったのが、スウェーデン発の100%天然木のスマホケース「Bark(バーク)」でした。

「この商品を日本で販売したい」。その思いから、販売前にはスウェーデンまで足を運び、メーカーや作り手と直接対話。Makuakeのページも夫婦二人で一から作り上げました。

これまで6ブランドを扱い、夫婦それぞれの強みを生かしながら貿易業を続けています。

「貿易家は、宝探し」だという山下さんご夫婦に、一目惚れした商品を日本へ届けるまでの道のりと、夫婦で取り組む貿易家という働き方について伺いました。

ひとり貿易塾5期 山下 大介さん・由稀さん(ご夫婦)

市場調査支援を手がける会社の経営に携わる。大介さんは前職で自動車金型部品メーカーの海外営業として、2019年から3年間タイに駐在。帰国後の2022年9月にひとり貿易塾へ入塾し、スウェーデン発の木製スマホケースブランド「Bark(バーク)」の日本総代理店として、Makuakeでのプロジェクトから自社ECでの一般販売までを手がける。これまでに6ブランド・計7回のクラウドファンディングを実施。大介さんが商品発掘とメーカー交渉、由稀さんがページ制作と広告運用を担当し、夫婦で貿易家として活動している。

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目次

タイ駐在で芽生えた「輸入ビジネス」への興味

── まずは、現在の働き方から伺わせてください。

大介さん:本業では市場調査支援会社の経営に携わっており、その子会社の新規事業として、貿易業を立ち上げました。本業で培ったノウハウやリソースを、貿易業にも生かしています。

ひとり貿易塾には、2022年9月に5期生として入塾しました。

── 市場調査の会社の経営に携わるなかで、「輸入ビジネスもやろう」となったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

大介さん:市場調査の会社を始める前は、自動車の金型部品を製作するメーカーに勤めていて、2019年から3年間、タイに駐在していました。

駐在中、東南アジアのいろいろな商品を目にするなかで、「日本にもこんな商品があったらいいのにな」と思うものがいくつもあったんです。だから帰国してからも、「輸入か輸出をやってみたい」という思いが、ずっと頭の片隅にありました。

その後、本屋さんを巡っていたときに出会ったのが、大竹さんの黄色い本『輸入ビジネス3.0』でした。読んですぐ「やってみたい」と思い、妻にかなりの熱量で「一緒にやろうよ」と。そのままセミナーに参加して、入塾を決めました。

── ご主人から「ひとり貿易をやってみたい」と言われたとき、由稀さんはどう思いましたか?

由稀さん:最初は、貿易の会社というと、スタッフや倉庫が必要で……というイメージがあったんです。

でも、ひとり貿易ならクラウドファンディングを活用することで、在庫を持たずに始められると知って。「それなら面白そうだね。やってみようか」と、二人で始めることになりました。

── 入塾前に不安はありましたか?

由稀さん:輸入ビジネスは未知の領域だったので、「私たちだけでどこまでできるんだろう」という気持ちはありました。

大介さん:私は前職で貿易実務の経験があったので、貿易の流れはなんとなくイメージができていました。でも、「商品を発掘できるのか」が最初は不安でした。

── 最初にメーカーとのやり取りが始まったのは、入塾からどのくらいのタイミングだったのでしょう?

大介さん:入塾してから2ヶ月後です。当時はまだAIもなかったので、1件1件時間をかけてリサーチして、何百社ものメーカーにアプローチしました。

5期のチャットワークを見ていると、入塾してまだ1週間しか経っていないのに、すでに独占販売権を獲得している方や、早い段階で「もうMakuakeを始めます」という方もいて。なかなか商品が決まらないことに焦りもありました。

でも、すべてが勉強だと思い、他の方の質問を見ては「なるほど、こういうときはこうするのか」と、ためになることは全部ノートにメモして粛々とやっていました。

100%天然木のスマホケース。スウェーデンのメーカー「Bark」との出会い

── そうして出会われたのが、今日持ってきてくださった商品ですね。まずは、商品の紹介をお願いします。

大介さん:スウェーデン発の「Bark(バーク)」という、木製のスマホケースです。

木製のスマホケースは日本にもありますが、シリコンケースに木の板を貼ったものが多いので、「Bark」は100%天然木を使っているところが特徴です。

厚みは2.5mmと薄さを追求しながらも、壊れにくい構造になっていて、欧州では特許を取得しています。天然木なので、一つひとつ木目が違うのも魅力です。

── 100%天然木だからこそ、使えば使うほど味が出そうですよね。手垢さえも味になっていくような。大介さんがこの商品に惹かれたのは、どんなところだったんですか?

大介さん:自然の素材を使っていることが尊く感じました。SDGsの観点からも、すごく価値のある商品だなと。

── 独占販売権の締結はスムーズでしたか?

由稀さん:当時はまだ貿易家としての販売実績がなかったので、メーカーからも実績について詳しく聞かれました。

大介さん:実績がない中で伝えたのは、本業で培ってきた市場調査のノウハウと、「この商品を日本で販売したい」という熱量です。返信が返ってくるまで1週間かかることもあり、やり取りには時間がかかりました。

その後、独占販売権をいただいてから、Makuakeでプロジェクトを実施する前にメーカーに会いにスウェーデンへ行きました。

── すごい行動力ですね。クラウドファンディングを終えてからメーカーに会いに行く方のお話はよく聞きますが、販売前にスウェーデンまで行かれたんですね。

大介さん:当時、北欧で「Formex(フォルメックス)」という展示会が開催されていて、Barkも出展すると聞いていたんです。それで「展示会にも行きたいし、工場も見たいからスウェーデンに行くね」と伝えたら、「いいよ」と。

現地では実際の商品や工場を見せてもらい、工房で働く作り手の思いも直接聞くことができました。その熱量に触れられたことで「Barkを日本で販売して、成果を出したい」という思いが強くなりました。

滞在中は夕食をご馳走になったり、いろいろなところへ連れて行っていただきました。直接会えたことが、今も関係が続いている理由のひとつだと思っています。

── Makuakeのページは、お二人で作られたんですか?

由稀さん:二人で全部作りました。

もともと会社のホームページは運営していたのですが、本格的なランディングページや、Makuake用の画像を作るのは初めてでした。似たような商品や売れている商品のページを見て、一から学びながら作っていきました。

大介さん:今改めて商品ページを見ると「粗いな」と思うところもありますが、当時の精一杯でした。プロジェクトが始まって、初めて商品が売れたときはすごく感動しました。

クラファンで終わらせない。Barkを長く届けていく

── クラファンを終えてからは、一般販売に進んでいるのでしょうか?

大介さん:今は自社のECサイトをメインに販売しています。継続的に売れてはいますが、まだ広告に依存している部分があります。ブランドの認知度を上げるという意味では、道半ばですね。ただ、複数回ご購入くださる方もいらっしゃるので、そこには手応えを感じています。

現在は第2弾を実施中。MagSafeにも対応し、四隅をより強化。

── 一般販売となると、ある程度の在庫を確保する必要があると思います。そのあたりの難しさはありますか?

大介さん:スマホケースは対応機種が多く、それにともなってSKUも増えます。ただ、その点はメーカーにかなり配慮していただいていて、一部はこちらで在庫を持ち、残りは受注生産で対応してもらえています。ありがたいことに、MOQ(最低発注数量)もなく、「これだけ売ってほしい」というプレッシャーも特にありません。

最初に「いいな」と思った商品ですし、メーカーも日本で販売を続けたいと言ってくれているので、これからも継続して販売していきたいと思っています。

お互いの得意を生かして夫婦で貿易家。行動」が「自信」につながる

── 夫婦で貿易業をされていますが、役割分担はしているのでしょうか?

大介さん:私が商品の発掘から契約、海外メーカーとのやり取りまでを担当しています。契約が済んで素材をいただいた後は、妻がページ制作や広告運用を担当してくれています。

私はずっと海外営業畑だったので、海外メーカーとの交渉は強みでもあり、好きなことでもあります。妻はもともと制作に興味がありました。お互いの得意を生かして、ひとつのビジネスとして成り立っているのは、すごくいいなと思います。

── 貿易業を始めて、どんな変化がありましたか?

大介さん:一目惚れした商品を日本で販売して、お客様から喜んでいただける。貿易家の仕事には、自分が動いたことで日本に足跡を残しているような手応えがあります。それがやっていて嬉しいですし、自信にもつながっています。

由稀さん:お店に並んでいる商品を見て「こういう売り方をしているんだ」、広告を見て「こういう言い回しをするんだ」と、日々アンテナを張って暮らすようになりました。

何気なく通り過ぎていた場所でも、「何か自分たちの仕事に生かせないかな」と意識して見るようになったのは大きな変化です。

次なる目標は、応援購入額1,000万円

── 今後、新たに挑戦してみたいジャンルや、目標はありますか?

大介さん:ガジェットや日用品などの取り扱いも増やしていきたいですし、オフラインの販路も広げていきたいと思っています。

もうひとつ目標として掲げているのが、クラウドファンディングで応援購入額1,000万円を突破することです。私の中では、そこがひとつの大きな成功の目安になっていて。1,000万円を超えている貿易家の仲間を見ると、輝いて見えるんですよね(笑)。

これまで6ブランドを扱い、今回で7回目のプロジェクトになりますが、最高額は540万円ほどです。だからこそ、1,000万円に届くプロジェクトを、これから作っていきたいと思っています。

応援購入額542万円を突破した手のひらサイズのポータブル電源「MIRENEX NEX430」。プロジェクト終了後は、メーカー自身がAmazonで一般販売を続けている。

── 新しい商品は、どのように探しているのでしょうか?

大介さん:大きく分けると、オンラインと海外展示会の2つです。オンラインは世界各国のAmazonなどで、最近はAIに作ってもらったリストからメーカーにアプローチしています。展示会は東アジアを中心に回って、直接話をしています。

AIでいろいろできるからこそ、実際に会って話すことがより大切だなと。これからも積極的に足を運びたいと思っています。

「宝探し」であり、「世界と日本の架け橋」

── 最後に、山下さんご夫婦にとって「貿易家」とは、どんな働き方でしょうか?

大介さん:宝探しです。いい商品やいいブランドに巡り会えるのって、運もあると思うんです。だからこそ、ワクワクしながら取り組めています。

由稀さん:私は、ベタかもしれませんが「世界と日本の架け橋」ですね。海外の商品を日本に届けるだけではなく、日本のお客様の声を海外のメーカーへ届けることもできる。価値をつなぐ存在だと思っています。

── 素敵なお話をありがとうございました!

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この記事を書いた人

1987年東京生まれ。大学卒業後、損害保険会社の営業事務を6年間経験。その後、夫の海外赴任に帯同するため退職し、1年間インド・ムンバイにて海外生活を満喫。帰国後は、「おうちで働く」を一つの軸に、ベビーマッサージの先生、Webデザインの勉強、物販のお手伝い、ブログ運営、様々なことに挑戦しながら、最終的に「ライター」の仕事に巡り逢う。現在の野望は「書く仕事を通して、人や物の想いを伝え続けること」。プライベートでは2児の母。

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