ebay輸出での転売から「ひとり貿易」に挑戦。貿易を通じて周りの人を幸せにしたい
「ebay輸出」と「ひとり貿易」、この2つをビジネスの柱として活動する相原さん。
ひとり貿易に挑戦しようと思ったきっかけの1つは、パートナーからの「私は転売ヤーと結婚したわけじゃない!」という言葉だったそうです。
相原さんが目指すのは貿易ビジネスを通じて周りの人を幸せにしていくこと。
そんな相原さんに、取り扱っている商品のことや一般販売での課題、今後の展望などを伺いました。
ひとり貿易塾7期生 相原さん
「海外とつながる」を軸に、メーカー、広告代理店での勤務経験を経て、カンボジアでの起業にも挑戦。帰国後は中古車の輸出商社や魚原料の輸入商社での勤務や、ネットビジネスなど、多岐にわたる経験の中で、貿易ビジネスに出会う。現在は、ebay輸出とひとり貿易を両軸に貿易家として活動。日本語、英語、カンボジア語(クメール語)を操るトリリンガル。2児の父。
相原さんの商品はこちら▼
冷却スティックで冷たさがずっと続く「FLETタンブラー」
使うほど首の形にフィットするネックピロー「スイートクラス・トラベルピロー」
ひとり貿易+ebay輸出=貿易家
ー現在の働き方を教えてください。
貿易会社を経営し、「ひとり貿易」と「ebay輸出」を行っています。業務時間の割合としては、ひとり貿易が7割、ebay輸出が3割ですが、収入面ではまだebay輸出の方が大きいです。
1日のスケジュール 7時:起床 8時30分:子どもを保育園に送る 9時:洗濯や掃除、運動 10時:仕事開始 トラブル対応 11時:ひとり貿易の仕事 12時:お昼休憩 13時〜18時:仕事 18時:食事、お風呂、子どもの寝かしつけ 20時:1回目就寝 0時:目が覚めて仕事 4時:2回目就寝 |
ー貿易ビジネスをはじめたきっかけを教えてください。
就職活動で自分と向き合う中で、漠然と「海外で働きたい」という思いが芽生え、特に東南アジアで仕事をしたいと思うようになりました。昔から「タイ人っぽいね」と言われることが多く、東南アジアに飛び込めば、現地の人々に助けてもらえると思ったからです。また、当時の東南アジアは経済成長が著しかったので、成長している市場に身を置くことで自分を高めたいという気持ちもありました。
そのため、就職先の条件は「海外で働けること」でした。海外転勤の可能性が高い企業を選び、メーカーや広告代理店でキャリアを積みました。その後、挑戦したのはカンボジアでの起業。最終的には資金がショートして日本に帰国することになりましたが、貴重な経験ができました。帰国後は海外と関わる商社に勤務し、2021年頃から自分でビジネスをしたいと思いebay輸出をはじめました。
ーカンボジアで起業!すごいですね。
知り合いにカンボジアで起業する広告代理店の方がいたんです。その人に会いにカンボジアに行った時に「お前はなんで他人のふんどしで相撲を取ろうとしてるんだ?海外で働きたいのなら、今すぐ行け」と背中を押してもらいました。その時、僕はまだ32歳で、「もしダメでもやり直せるだろう」と思い、その方のつてを頼り、カンボジアで起業することにしました。人との縁が、僕の背中を押してくれました。
「人との繋がり」や「最新の情報」を求めてひとり貿易塾に参加
ーebay輸出から貿易ビジネスをスタートしたのですね。ひとり貿易にも挑戦しようと思ったのはどうしてですか?
結局ebay輸出は転売なんです。 自分だけがその商品を販売できるわけではないから、どんどん競合が増えていって、いつの間にか価格競争に巻き込まれて、利幅がどんどん小さくなっていく。
ある時、妻から「私は転売ヤーと結婚したわけじゃない」と言われたことがあって。その言葉はかなり心に刺さりました。また、法改正などで、今後ebay輸出が厳しくなる可能性がある一方、プレイヤーは増えています。ebay輸出だけに頼るのはリスクがあると思い、ひとり貿易に挑戦することを決めました。
ークラファン物販を学ぶ場として、どうして「ひとり貿易塾」を選んだのですか?
実は、ひとり貿易塾に入る前には、別の物販スクールに通っていたんです。そこでも多くの学びがあったのですが、コンテンツの更新頻度が低かったり、人と直接会う機会が少なかったりしたので、もっとリアルな交流を通じて新しい知識を得たいと思いました。
そんな時に、通っていたスクールの講師の方が東京ギフトショーのクラウドファンディング・ラウンジ(ユビケンが運営するブース)に出展すると聞きました。ちょうどその頃、僕も商品の卸先を探していたので、「東京ギフトショーに出展したい!」と思い、問い合わせをしたのが、ひとり貿易塾との最初の接点です。運よくブースに空きが出て、2023年9月に一般枠でクラウドファンディング・ラウンジに出展することができました。出展中に塾生さんからひとり貿易塾の魅力を聞いたことで、入塾する決心がつきました。
ー他の貿易スクールと比較して、ひとり貿易塾の良さはどんな点だと感じていますか?
まず、毎年コンテンツがブラッシュアップされることです。貿易業界の動向は日々変化するので、最新の情報に触れられるのはありがたいです。また、同期生や異なる期の仲間とリアルに会える機会もあります。さらに、補助金についてのレクチャーや、東京ギフトショーの後に開催される卸業者との商談会など、コンテンツもかなり充実しています。そして、ひとり貿易塾は他のスクールに比べると費用も安いのではないでしょうか。
Makuakeで1000人以上が応援購入!冷却スティック付タンブラー
ー相原さんの商品について話を聞かせてください。これまでクラファンで取り扱ったのは何商品ですか?
3商品です。初めての商品がウクライナ製のデスクマット。次がネックピロー。ひとり貿易塾に入ってからはタンブラーを販売しました。
ーでは、タンブラーについて詳しくお話を聞かせてください。
アメリカのクラファンサイトKickstarterで見つけたタイメーカーのタンブラーです。付属の冷却スティックを冷やして装着すると、約15分でドリンクが冷たくなります。また、氷を使わないため、飲み物が薄まらず美味しさを保てます。冷却スティックは磁石でタンブラーにくっつくので、逆さまにしても外れる心配がありません。素材には酸性に強い304ステンレスが使われており、スポーツドリンクやワインも問題なく入れられます。さらに、真空二重構造のおかげで、スティックを外せば温かい飲み物を最大5時間保温できます。
以前取り扱ったネックピローは、実際に使ってもらわないと良さが伝わりにくく、見せ方に悩んでいました。しかし、このタンブラーなら、画像や動画でベネフィットを伝えやすいと感じました。
結果的に、Makuakeでは1000人を超える方に応援購入いただき、716万円の支援金が集まりました。
ー独占販売権の交渉はスムーズでしたか?
実は、このメーカーとは別の商品をきっかけに出会ったんです。当時、外注の方にKickstarterで面白そうな商品をリストアップしてもらい、そのリストを基にメーカーに連絡を取っていました。その中の一つがこのメーカーさんでしたが、最初にリストに載っていたのは、ピザなどを電子レンジでふっくら温められるドーム型の商品でした。
良い商品だったのですが、回転式の電子レンジにしか対応していないため、日本市場では難しいかもしれないと正直に伝えたところ、代わりにこのタンブラーを紹介してくれました。
ただ、このタンブラーは1つ前のモデルを別の方がすでにMakuakeで販売していたんです。蓋部分がリニューアルされていたので、それでもMakuakeに出せるのかを確認し、サンプルを取り寄せて販売する準備を進めました。
ー1000人以上の方に応援購入いただけて、どんな気持ちでしたか?
信じられなかったですね。正直、ここまで売れるとは思っていなかったんです。というのも、蓋を変更する前の商品は、Makuakeでは400万円ほどの売り上げだったからです。
ところが、プロジェクトを公開したら、最初の1ヶ月間は購入通知が止まらなくて。メーカーさんも予想以上の結果にすごく喜んでくれました。ただ、たくさん売れて嬉しい反面、責任も増えるので、「無事に配送できるだろうか、トラブルが起きないだろうか」などの不安もありました。
ートラブルなどはありませんでしたか?
食品衛生法の検査に手間取り、予定していた配送期間に間に合うのかハラハラしました。というのも、当初は旧モデルの検査結果を使う予定だったのですが、製造工場が変更されていたことが後から判明し、再度検査が必要になったからです。「工場が変わったなら最初に教えてよ……」と思いましたが、無事に期日までに配送できて安心しました。
総代理店として輸出にも挑戦したい
―これまで3つの商品をクラファンで販売されているとのことですが、一般販売に進んでいる商品はありますか?
ネックピローとタンブラーは日本総代理店として、自社サイト、Amazon、Makuakeストアで販売しています。また、卸業者にお願いして、楽天、Yahoo!ショッピングでも販売しています。本当は全て自分で販売できたら良いのですが、なかなか手が回らないのが現状です。
―一般販売ならではの課題や難しさはありますか?
卸さんにもネットで販売してもらっているため、自社サイトでの値下げが難しい状況です。顧客が競合してしまうからです。そのため、自社サイトではLINE登録やメール登録をしてくれた方に限定して、特別なセールを開催しています。今日もサマーセールを実施したところ、すぐにタンブラーが6個売れました。
―つまり、卸をしなければ、もっと自由度高く販売できるということでしょうか?
お、鋭いですね。実は、当時は店頭販売を見据えて卸業者と契約しましたが、卸の掛け率はあまり良くないんです。最初から自社のネット販売だけに絞っていれば、もっと価格を抑えて販売できたかなと。
たくさんの人に商品を知ってもらうには、オフラインで人目に触れる場所で販売するのは効果的です。一方で、スタートアップの場合は、オンラインで価格を抑えつつ販売した方が、利益を出しやすいかもしれません。
―そういった経験を踏まえて、今後はどのような戦略を考えていますか?
オンラインとオフライン、どちらでも販売していくのであれば、仕入れ値が安くて良い商品を選ぶことが重要だと気づきました。これまで取り扱ってきた商品は、仕入れ値がかなり高かったんです。特に、アメリカやヨーロッパの商品は、仕入れや輸送コストがどうしても高くなりがちです。
一方で、日本に近い香港や中国の商品であれば、仕入れ値も輸送費も抑えられます。だから、今後はアジアの展示会で新しい商品を見つけていくのが良い戦略かなと考えています。
―では、今後はアジアの展示会に積極的に参加されるのですか?
実は、ちょっとトラブルがあって、今年は行くのが難しいかもしれないです。
―トラブルとは?
Facebook広告を出稿しているのですが、アカウントに不正ログインがあって、全く関係のない商品の広告が設定されて、とんでもない支払いが請求されてしまったんです。今Facebookと話をしていますが、不正アクセスの問題が解決するまで広告が出せない状況です。せっかく冷却タンブラーが売れる時期なのに、広告が出せないから売り上げが上がらない……。こういったことは誰にでも起こりうることなので、アカウントの2段階認証を設定したり、使うたびにログアウトしたりするなどの対策が必要なようです。
そんな状況なので、広告から買ってもらう以外の戦略を考えなければと思っています。
ー具体的にはどのような戦略を検討されているのですか?
ネックピローの戦略は、企業向け販売に注力することです。実は今、営業代行会社との契約を検討していて、空港、航空会社、運送会社、タクシー会社など、ネックピローの需要が高い企業への営業を依頼する予定です。
当初はコスト面で躊躇していましたが、営業代行会社の決算期に合わせた値引きと妻の後押しもあり、挑戦する決心がつきました。
また、タンブラーについては、香港、台湾、シンガポールへの輸出を計画しています。Makuakeで販売された商品が海外のクラファンでも成功しているケースを見て、自分にもできるのではと考えました。
メーカーに提案したところ、「ぜひやってみてほしい」と前向きな返事をもらえました。現在は、仕入れ値の交渉を進めている段階です。
ーピンチをチャンスに変えて、新たな販売方法にチャレンジしていくのですね。
クラファン・一般販売・東京ギフトショー。行動するたびに得られる気づき
ー相原さんは、東京ギフトショーに2回出展されていますよね。出展を通じて、何か変化はありましたか?
卸さんとの繋がりができたこと、バイヤーさんと話をすることで今後販売する上でのヒントが得られたこと、大手家電量販店さんと商談ができたこと、めざましテレビから取材を受けたこと……。出展するのとしないのでは大きな違いでした。
ーテレビ取材を受けたのですね!
そうなんです。ただ、その時期はちょうどMakuakeの配送が終わったばかりで、一般販売の準備が整っていませんでした。テレビで紹介されたという実績はできたけれど、販売のタイミングが合わず悔しかったです。
ーバイヤーさんからはどんな反応があったのですか?
初めて東京ギフトショーに出展した時、空港の免税店に商品を卸している方と名刺交換をしました。その方にネックピローの卸価格を聞かれ、「15,000円です」と伝えたところ、「ネックピローの市場価格は大体3,000円ほどです。もしその価格で販売したいのなら、専門家のお墨付きなどをもらうと良いですよ」とアドバイスをもらいました。その後、知り合いの柔道整復師の方に商品を試してもらい、お墨付きを得ました。
この経験からも実感したのですが、クラファンでは売れても一般販売だと「価格が高い」と言われてしまうケースは多いのかなと。でも、僕はこのネックピローが素晴らしい商品だと思っているので、なんとかその良さを伝えたいと奮闘しているのですが。
ークラファンで販売した商品は価格的に一般販売しづらいケースもあると。一方で、クラファンもしたいし、一般販売も進めたい。どうするべきなのでしょう?
二つあると思っていて、一つは、さっきも触れたように仕入れ値の安い商品を探すことです。仕入れ値が低ければ、たとえ卸業者に販売して4割の利益しか残らなくても、十分に利益を確保できます。
もう一つは、デザイン力を高めることです。ひとり貿易塾の仲間を見ていて、デザインがどれだけ重要かを強く実感しました。この商品があることでどのように生活が変わるのか、商品のベネフィットをデザインで伝えることができたら、メディアからも注目されやすいのかなと。メディアで紹介してもらえれば、めちゃくちゃ広告効果がありますよね。
だから、最近はデザインを勉強したいと思っています。
ークラファン物販、一般販売、展示会への出展、経験するたびに色々な気づきがありますね。他にもひとり貿易に挑戦して気がついたことはありますか?
クラファン物販は、仕入れ前に商品を販売できるため、リスクを減らして物販ビジネスに挑戦できます。しかし、実際に挑戦して感じたのは、ある程度の初期費用は必要だということです。例えば、サンプルの購入費用やLPの作成費用、広告費用……、だいたい30万〜50万円は必要かなと。また、売れた後には輸送費や関税、地方消費税、検品代、保険料など、さまざまな費用がかかります。こうした費用をきちんと考慮しないと、黒字化は難しいです。
さらに、クラファンは販売を終えてから実際に入金されるまでに2〜3ヶ月かかるため、キャッシュフローには注意が必要です。
とはいえ、最初から大量に商品を仕入れることなく、リスクを大幅に抑えながら、自分の商品を日本や世界に広められる。これは大きな魅力であり、夢がありますよね。
「私の仕事は貿易家です」胸をはって紹介できることが喜びに
ーひとり貿易を始めてから変わったことはありますか?
ebay輸出だけをしていた頃は、常に価格競争に悩まされていました。売れると嬉しい反面、「在庫は大丈夫かな?」と不安になり、気持ちが沈むことも多かったんです。
しかし今は、総代理店として自分の商品を販売できるようになったので、売れたときは純粋に嬉しいです。それに、「どんな仕事をしているの?」と聞かれたら、「貿易家です」「貿易会社の一人社長です」と自信を持って言えるのが、とても誇らしいです。「貿易家」という働き方を作ってくれた大竹さんには本当に感謝しています。
物販を通じて周りの人を幸せにしたい
ー最後になりますが、相原さんの今後の目標を教えてください
まず一つは、縁があって出会えたネックピローやタンブラーを日本だけでなく、世界にも展開していきたいと考えています。また、新たな海外製品を見つけていきたいですし、日本の伝統工芸品を海外のクラファンで紹介するという新しいことにも挑戦してみたいです。さらに、発展途上国の商品を世界に広めることも目指しています。これは、カンボジアでの起業経験から生まれた思いです。現地の文化や人々に触れ、彼らが作る素晴らしい商品の可能性を強く感じました。
僕の会社「TRNOVR(ターンオーバー)」という名前には、「ひっくり返す」や「逆転する」という意味があります。発展途上国の商品を広め、その国の人々の生活を前向きに変えていきたいという願いを込めています。
物を通じて日本と世界を繋げ、自分の手の届く範囲であっても、人を幸せにできる存在になりたい。それが私の目指していることです。